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山口地方裁判所 昭和52年(行ウ)4号 判決 1981年6月25日

原告 有限会社五光

被告 岩国県税事務所長

代理人 有吉一郎 平元勝一 山口英雄 浜田孝 ほか五名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五一年九月四日付で原告に対してなした、原告の昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の料理飲食等消費税の課税標準額及び税額を別表第一の(2)「課税標準額」「税額」欄記載の各金額とした更正処分は、いずれもこれを取り消す。

2  被告が昭和五一年九月四日付で原告に対してなした、原告の昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の料理飲食等消費税の過少申告加算金を別表第一の(2)「過少申告加算金額」欄記載の各金額とした賦課決定処分は、いずれもこれを取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、昭和四五年三月以降昭和五二年五月末日まで飲食店「フアイブスポツト」を経営し、その間料理飲食等消費税(以下「料飲税」という。)の特別徴収義務者に指定されていた者である。

2  原告は、昭和五〇年一月分から昭和五一年七月分までの「フアイブスポツト」の料飲税の課税標準額及び税額を別表第一の(1)「課税標準額」「税額」欄記載のとおり申告し、右税額を納入した。

3  被告は、昭和五一年九月四日付で、原告に対し、原告の昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の料飲税の課税標準額及び税額を別表第一の(2)「課税標準額」「税額」欄記載の各金額とする更正処分、並びに、同期間中の料飲税の過少申告加算金について、別表第一の(2)「過少申告加算金額」欄記載の各金額とする賦課決定処分(以下、右更正処分及び賦課決定処分を併せて「本件処分」という。)をなした。

4  そこで、原告は、昭和五一年九月一〇日付で訴外山口県知事に対し、本件処分を不服として審査請求をなしたが、同知事は、昭和五二年二月二五日付で右審査請求を棄却する裁決をなした。

5  しかしながら、本件処分は次のとおり実体的にも手続的にも違法なものであるので、その取消を求める。

(一) (実体的違法)

原告の昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の料飲税の課税標準額は、別表第一の(1)「課税標準額」欄記載の各金額であるから、本件処分は、原告の料飲税の課税標準額を過大に認定した違法がある。

すなわち、実際には原告は原始伝票を作為していないにも拘わらず、被告が原告において課税標準額を引下げるために原始伝票を作為したという理由でもつて、しかも担当徴税職員の思惑と偏見により課税標準額を認定して本件処分をなしたものである。

(二) (手続的違法)

(1) 被告は、本件処分を原告に通知するまでの間に三回にわたり恣意的に更正税額を変更しており、これは課税処分の公定力を無視した違法なものであつて、この点からも本件処分は違法である。

(2) 被告は、本件訴訟が提起された後においても更正税額を四回補正しており、この点からも本件処分は違法である。

(3) 被告は、原告が昭和五〇年八月二二日から同年九月二日までの売上金約八〇万円を盗まれた事実を充分認識していたのであるから、地方税法一二二条の三・一項の規定に基づき、原告の右期間内の料飲税の納入義務を免除しなければならないにも拘わらず、右義務を免除することなく本件処分をなしたものであつて、この点からも本件処分は違法である。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし4の各事実はすべて認める。

2  同5の主張は争う。

三  本件処分の適法性に関する被告の主張

1  (請求原因5(一)について)

原告は、請求原因2のとおり料飲税の課税標準額及び税額を申告し、右税額を納入した。

ところが、被告が調査したところ、原告は、本来課税対象となるべき売上げを免税の対象となる売上げ(地方税法一一四条の四・一項及び山口県税賦課徴収条例七〇条の二・一項により、一人一回の料金が一七〇〇円(但し、昭和五〇年九月三〇日までは一二〇〇円)以下の売上げに対しては料飲税を課すことができない。)のごとく仮装するため、原始伝票の記載人員を水増しするなど、虚偽の内容の原始伝票を作成し、その売上伝票に基づいて過少に申告納入していることが判明した。

そこで、被告は、昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の「フアイブスポツト」の原始伝票を検討して課税対象となる売上げを抽出し、これに基づいて同期間中の同店の料飲税の課税標準額及び税額を別表第一の(2)「課税標準額」「税額」欄記載のとおり更正し、同表の(2)「過少申告加算金額」欄記載のとおり過少申告加算金の賦課決定処分をなした。

そして、更に被告が本件処分ののちに右原始伝票を調査したところ、原告の昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の料飲税の課税標準額・税額・過少申告加算金額は、別表第一の(3)「課税標準額」「税額」「過少申告加算金額」欄記載の各金額であることが判明した。

従つて、同表の(3)「課税標準額」「税額」「過少申告加算金額」欄記載の各金額の範囲内でなした本件処分は適法である。

2  (請求原因5(二)(1)について)

原告は、被告係員の不足税額を納入するよう説得した行為をとらえて更正処分であると主張しているようであるが、被告係員に更正処分をする権限はなく、適式の方法もとられていないのであるから、右被告係員の説得行為が更正処分に当らないことは明らかである。

3  (請求原因5(二)(2)について)

原告は、被告が本件訴訟提起後において本件処分の税額を補正したことが違法であると主張するが、課税処分取消訴訟の審判の対象は、当該課税処分によつて認定された課税標準額又は税額が真実の課税標準額又は税額を上回るか否かであるから、本件課税処分の正当性を維持する理由として更正の段階において考慮されなかつた事実を新たに主張することも許される。

4  (請求原因5(二)(3)について)

原告がその売上金を盗難にあつたとしても、その事情を税金の賦課の際に考慮すべきかは疑問であり、もし、原告が地方税法一二二条の三、条例七八条の二の三の措置を求めるのであれば、同条所定の添付書類と共に申請書を提出すべきところ、原告はそれをなしていないのであるから、原告の主張は失当である。

第三証拠<略>

理由

一  請求原因1ないし4の各事実についてはすべて当事者間に争いがない。

そこで、以下、本件処分の適法性について検討する。

なお、各書証については、その成立(写しを提出のものについては、その原本の存在・成立)につきすべて争いがないので、単に書証の番号のみを記すこととする。

二  まず、実体的適法性、すなわち本件処分における課税標準額・税額・過少申告加算金額がそれぞれ適法なものであつたか否かについて、判断する。

1  被告は、本件処分をなすに至つた理由につき、原告が課税標準額を過少申告するために原始伝票を作為したことが判明したためであると主張するので、原告が右理由で原始伝票を作為したか否かという点について、まず最初に検討することとする。

(一)  <証拠略>によれば、原告から提出された昭和五〇年一月から同年一二月までの間の料飲税納入申告によつて算出した右期間中の「フアイブスポツト」の総売上額に対する課税対象売上額の割合(以下「課税対象割合」という。)は、平均一一・八パーセントであつて、近隣の同種同規模で利用料金も類似する他の二店舗(仮にこれをA店B店と呼称すると、(イ)顧客収容人員、(ロ)従業員数、(ハ)昭和五〇年中の年間総売上額、(ニ)利用料金の各対比は、原告店舗において、(イ)三七名、(ロ)男女各二名、(ハ)一八、九八三、八〇〇円、A店において(イ)三六名、(ロ)男一名女四名、(ハ)二三、五九四、七一〇円、B店において(イ)二三名、(ロ)女三名、(ハ)一五、四五八、五四〇円であり、(ニ)については品目により各店同料金のものと異るものとがあるが、異るものもその差は僅少である。)の右期間中の課税対象割合がA店平均四五・三パーセント、B店平均六二・九パーセントであるのに較べ、著しく低率であることが認められる。

もつとも、いわゆる「スナツク」(<証拠略>によれば、「フアイブスポツト」は「スナツク」であることが認められる。)においては、経営者の能力や従業員の数、接客態度等の差異が顧客の利用料金に差異を生じさせることは考えられるが、前認定のように比較したA・B二店舗が「フアイブスポツト」と規模・利用料金等において類似することを考え併せると、原告店舗の前記課税対象割合の著しい低率はあまりに不自然であるといわなければならない。

(二)  <証拠略>によれば、原告の原始伝票により「フアイブスポツト」の売上げを段階別に分けたところ、同店においては、提供品目の料金や営業内容の変更がないにも拘らず、昭和五〇年一〇月分を境にして、一二〇一円から一七〇〇円までの売上げがそれまでに較べ極端に上昇し、総売上額に対する一二〇一円から一七〇〇円までの売上額の占める割合についてみると、昭和五〇年一月から同年九月までは平均三・二パーセントであつたのに、同年一〇月から同年一二月までは平均四六・六パーセントに上昇し、特に一一月・一二月においてはそれぞれ六三・一、六四・一パーセントであることが認められる。これは、昭和五〇年一〇月一日、料飲税に係る免税点につき、それまで一二〇〇円であつたものが一七〇〇円に改正されたのに対応して、それまで原告は原始伝票作成に当り、売上げを一人当り一二〇〇円以下に押えることに意を用いていたのを、昭和五〇年一〇月からは前記引上げられた免税額の限度以下で押えるよう意を用いるようになつたことから生じた現象であると考えられる。

(三)  <証拠略>によれば、洋酒ボトルをキープした場合、その時点で飲酒したものとみなして、この時の行為人員を利用人員として課税することとしていた事実が認められ、この課税方法自体何ら不合理な点はない。従つて、洋酒ボトルをキープした場合、一人当たりの売上金額は高額となり、通常その多くが課税対象売上になるものと思われる。しかるに、<証拠略>によれば、原告店舗の場合、洋酒ボトルのキープを伴う原始伝票についてみると、提供品目の提供数に比較して総体的に記載人員が多いこと、また、同一利用者毎に原始伝票を抽出してみると、洋酒ボトルをキープしない時の原始伝票の記載人員に較べ、洋酒ボトルをキープした時の原始伝票の記載人員は極端に多いことが認められる。

(四)  <証拠略>によれば、同じ利用行為でありながら、原始伝票の人員欄に記載された人員と売掛帳に記載された人員とが一致しない原始伝票が存在することが認められる。

(五)  <証拠略>によれば、原告店舗の昭和五一年以後の原始伝票の中には、その筆跡から同一機会に同一人によつて連続して作成された形跡が窺われ、明らかに書き換えられたと思われる原始伝票が多数存在することが認められるのであり、例えば、洋酒ボトルをキープしたにも拘わらず、原始伝票の利用行為としては、キープせずに水割等を注文して、それを飲んだように書き換えられたとみられる原始伝票、書き換えた上に同一人が同一日に二回「フアイブスポツト」を利用したことになつているといつた内容の不自然な原始伝票が数多く存在することが認められる。そして、<証拠略>によれば、これは、被告が原告に対し、昭和五〇年一月から同年一二月までの原始伝票について調査した際特に洋酒ボトルのキープを伴うものについて、利用内容に比し記載された利用人員が相対的に多く不合理であると指摘したことから、同五一年一月からの売上げについては右のような指摘を潜脱しようとしたことによるものであることが窺われる。その結果、<証拠略>によれば、昭和五一年一月以降、それまでに較べ洋酒ボトルのキープ本数が約三分の一に減少した事実が認められ、また<証拠略>によれば、顧客がウイスキー等のアルコールなしに、ミネラルとアイスのみによつて、つき出し等を食べたという不自然な利用行為が存在していることが認められる。

(六)  <証拠略>によれば、被告係員が原告店舗を利用した利用者数名に対してその利用状況を直接調査・確認したところ、実際の利用人員に比べて原始伝票の利用人員が多く水増しされていたもの、利用者の実際の利用行為が洋酒ボトルのキープを伴うものであつたのに、原始伝票では洋酒の水割などに書き換えられていたもの、実際は当日利用者が原告店舗を一回しか利用していないのに、原始伝票では利用者が一日に二回も利用したように原始伝票が分割されていたもの等、明らかに利用人員を水増しされた原始伝票や利用行為の内容を書き換えられた原始伝票が、多数存在したことが認められる。

(七)  <証拠略>によれば、原告の原始伝票中には、利用人員を一名減ずれば課税対象売上になるものが多いことが認められる。

(八)  そして、以上認定した事実を総合すれば、原告が、原始伝票の利用人員を意識的に水増したり、原始伝票の利用行為の内容を書き換えたりして、課税対象売上を免税売上の如く仮装していたことが認められ、原告が課税標準額を過少申告するために、原始伝票を作為した事実は明らかであるといわなければならない。

2  そこで、次に、被告のなした課税標準額の認定が合理的であるか否かについて、検討することとする。

<証拠略>によれば、被告は、原告の提出した「フアイブスポツト」の原始伝票を検討して、そのうちから課税対象となる原始伝票を抽出し、それに基づいて課税標準額を認定したこと、及び右抽出した原始伝票は別表第二の(1)ないし(18)に分類されることが認められる。

そこで、以下、同表の分類に従つて、被告のなした課税標準額の認定の合理性について判断する。

(一)  同表の(1)掲記の原始伝票については、同所掲記の各書証により、これが課税対象売上であることが認められる。

(二)  次に、同表の(2)について検討するに、前記二、1、(四)、で認定したように、売掛帳に記載された人員と原始伝票の人員欄に記載された人員とが一致しない原始伝票が存在する事実が認められるところ、これらは両者の記載の態様からみて単なる書違ではなく、原告が課税対象額を過少申告するために原始伝票の人員欄の記載につき作為したものと推認されるから、「売掛帳に記載されている人員」をもつて利用人員と認定し、右原始伝票が作成された時の利用行為は課税対象売上であると認定することは合理的であるといえる。なお、被告の認定中には、原始伝票に記載されたテーブル料の人員を以て利用人員と認定したとするものがあるが、<証拠略>によると、原告店舗の席料は料金の一〇%ということであつて、テーブル料金額から直ちに利用人員を算定することはできないと思われること、テーブル料欄に金額記入のある原始伝票は僅かに二枚であることに照らし同欄記入の金額が果してテーブル料金を表わすものか疑問があることからして、右テーブル料人員から利用人員を認定したとすることについては合理性を認めることができない(但し、被告が右認定方法で課税標準売上と認定した<証拠略>の原始伝票については、「原始伝票の付出しの欄以外に記載されている他の付出しの数量によつて利用人員を認定」し、これを課税標準売上と認めることができる。従つて、被告認定の課税標準から除外さるべき売上げは、乙第一三号証の二三、昭和五〇年一一月一三日の金四、〇五〇円のみである)。

(三)  また、同表の(17)、(18)についても、前記二、1、(五)で認定したように、昭和五一年以後の原始伝票の中には、利用行為の内容について書き換えが行われたとみられる原始伝票、及び書き換えた上に同一人が同一日に二回「フアイブスポツト」を利用するといつた不自然な原始伝票が数多く存在することが認められ、このような場合においては、仮に顧客の利用行為が免税対象売上であれば、右のような作為は不必要であることから、右作為は、課税対象売上を免税対象売上にみせるためになされたものと認めるのが相当であり、従つて、右原始伝票が作成された時の利用行為は、すべて課税対象売上であると認定することは、合理的な認定であるといえる。

また同表の(16)掲記の各書証に照らすと、同一日に同一顧客名の利用行為で、ボトルのキープを伴うものと伴わないものと各別の原始伝票が作成されているものが可成りあることが認められるところ、これらも本来課税対象売上に該当する一回的利用行為を、免税対象売上に仮装するため二回の利用行為の如く原始伝票を起票したものと推定することは、不合理な認定とはいえないというべきである。

(四)  同表の(3)ないし(15)について判断するに、<証拠略>によれば、被告は、右(3)ないし(15)掲記の原始伝票については、利用人員との関係において特に関連性の強い付出し類の数を基本とし、酒類、ミネラル等の提供数も参考にしながら、他方、顧客一人につき必しも一品以上の付出しが提供されるものではないことも考慮し、右のみからは利用人員が判然としない場合にはそれぞれの伝票について考えられる常識的合理的判定要素を求めて利用人員を認定するという方針で、実際の利用人員の認定作業を右(3)ないし(15)の表題記載のような各分類基準のもとに進め、原始伝票に記載された利用行為と原始伝票に記載された利用人員とが不自然と思われるもののみを抽出したこと、右作業により抽出されたのが、別表第二、(3)ないし(15)にそれぞれ掲記の書証(原始伝票)であることが認められる。従つて、これらの原始伝票についても、原告が課税標準額を過少申告するために原始伝票の利用人員欄の記載につき作為したものと認め、右原始伝票が作成された時の利用行為はすべて課税対象売上であると認定したことには、合理性があるというべきである。

以上のとおり、被告による原告の昭和五〇年一月から昭和五一年七月までの各月毎の課税標準額の認定方法は、いずれも合理的なものであることが認められる。尤も、被告がなしたそれぞれの原始伝票に対する前認定のような解釈・推論は、前掲各原始伝票の内容・体裁等から、一義的確定的排他的に導き出しうる訳のものではもとよりなく、同一伝票の記載から他の解釈・推論を求めることも可能であり(例えば、付出しを全く取らない客、複数人で一皿の付出しを取る客、付出しもなくボトルのみを多数人で飲む客、一日に二回来る客などもありうる訳であり、極端に云えば、ミネラルを付出しで飲む客も絶無とは云えないかも知れない)、その意味では、前叙の被告の認定方法がいずれも合理的であると云うのも、当該原始伝票に対して被告のような解釈・推論をなしても、多くの場合比較的合理性のある判定と首肯しうると云うことであつて、その限りでは、右「認めうる合理性」とは「一応の合理性」に他ならないというを妥当としよう。しかし、前認定のように、原告が昭和五〇年一月から同五一年の七月にかけて、課税標準売上を過少申告するため、その売上伝票を作為し、或いは操作を加えていたことが明らかに認められる以上、売上伝票に作為、操作が加えられた場合の利用行為内容の正確な把握がその性質上極めて容易でないこととなるのに鑑みても、被告の認定に「一応の合理性」が認められるならば、これを争う原告において、右認定が誤りでありそれが真実の課税標準額と異ることを、具体的客観的に明らかにすべきであつて、これがない限り、被告の認定の適法性に関する立証は、右「一応の合理性」を以て足るものと解するのが相当である。しかるに、本件全証拠によるも、被告の認定の右合理性を覆えし、真実の課税標準額が右認定額を下回るものであることを認めるに足るものは何もない。

3  そして、<証拠略>によれば、右認定方法により(但し前記二、2、(二)において除外した認定を除く)原告の同期間中の各月毎の課税標準額を算出すると、それは別表第一の3「課税標準額」欄記載の各金額(但し、五〇年一一月の「六八五、二五〇円」は「六八一、二〇〇円」と訂正する)となることが認められる。

そこで、右原告の課税標準額に対応する税額(課税標準額の一〇パーセント)を算出すると、同表の(3)「税額」欄記載の各金額(但し五〇年一一月の「六八、五二五円」は「六八、一二〇円」に訂正する)となり、また原告の過少申告加算金額は同表の(3)「税額」欄記載の金額から同表の(1)「税額」欄記載の金額を引いた金額(これに一〇〇〇円未満の端数があるとき、またはその金額が二〇〇〇円未満であるときは、その端数金額またはその全額を切り捨てる。)に一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額(一〇〇円未満の端数があるとき、またはその全額が五〇〇円未満であるときは、その端数またはその全額を切り捨てる)となるから、同表の(3)「過少申告加算金額」欄記載の金額(但し五〇年一一月の「二、七〇〇円」は「二、六〇〇円」に訂正する。)となる。

従つて、本件処分は、課税標準額・税額・過少申告加算金額が右認定した各金額を上回らないから、適法なものであるといわなければならない。

三  次に、本件処分において原告の主張する手続的違法があつたか否かの点について、順次検討する。

1  (請求原因5(二)(1)の主張について)

<証拠略>によれば、(一)被告係員は、原告の昭和五〇年一月から同年一二月までの各月毎の料飲税の課税標準額及び税額を調査し、その結果不足税額約六〇万円を算出し、昭和五一年三月四日、原告に対し、その納入を行なうよう説得したこと、(二)原告は、右説得に対し、今後適正な申告納入をすること、現金約八〇万円を盗難にあつたことを理由として納入額の大幅な減額を要求し、これに対し、被告係員は、不足税額の約半額を処分留保することとし、原告に対し、約三〇万円を納入するよう説得したこと、(三)原告は、右説得に応じず、更に納入額の減額を要求し、この要求が通らないとみるや態度を急変し、約六〇万円について更正処分を行なよう求めるに至つたこと、(四)そこで、被告は、更に追加調査した昭和五一年一月分から同年七月分までの不足税額も併わせて本件処分をなしたこと、以上の事実が認められ、原告は、被告係員が原告に対しそれぞれ六〇万円、三〇万円を納入するように説得した行為をもつて、その都度更正処分が行われたと主張するもののようであるが、被告係員には更正処分をする権限はなく、また右説得行為は、更正処分としての適式な方法にもよつていないのであるから、右被告係員の行為は正に説得行為たる以上の何ものでもないというべきであり、これを目して更正処分とは到底認めることはできず、原告の右主張は全く理由がない。

2  (請求原因5(二)2の主張について)

原告は、被告が本件訴訟提起後において更正税額を補正したことをもつて本件処分が違法であると主張するが、課税処分取消訴訟の審判の対象は、当該課税処分によつて認定された課税標準額または税額が真実の課税標準額または税額を上回るか否かであるから、本件課税処分の正当性を維持する理由として更正の段階において考慮されなかつた事実を新たに主張することも許されるのは当然であり、原告の右主張は到底採用できない。

3  (請求原因5(二)3の主張について)

地方税法一二二条の三によれば、知事は、特別徴収義務者が、その徴収した料飲税額を失つたことにつき避けることのできない理由があつたと認めた場合には、その納入義務を免除することができることとなつている。しかし免除を受けようとする者は、同条及び山口県税賦課徴収条例七八条の二の三による手続(同条所定の添付書類と共に申請書を提出する手続)を経ることを要するところ、原告が右手続を了したとの主張・立証はない。従つて、この点に関する原告の主張も、理由がないといわなければならない。

四  以上の次第で、本件処分は実体的にも手続的にも適法であり、本件処分の取消を求める原告の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条・民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 西岡宜兄 紙浦健二 大谷辰雄)

別表

第一<略>

第二課税対象売上と認定できる原始伝票一覧表

(1) 明らかに課税対象売上であるもの <略>

(2) 売掛帳に記載されている人員を利用人員と認定したもの <略>

(3) 原始伝票の付出しの欄に記載されている数量によつて利用人員を認定したもの <略>

(4) 原始伝票の付出しの欄以外に記載されている他の付出し(以下「他の付出」という。)の数量によつて利用人員を認定したもの <略>

(5) 原始伝票の付出しの欄に記載されている数量と他の付出しの数量との合計数量により利用人員を認定したもの <略>

(6) 原始伝票の付出しの欄に記載されている数量を基本とし、ミネラル・コーラー及びセブンアツプ(以下「ミネラル等」という。)の数量を勘案のうえ利用人員を認定したもの <略>

(7) 他の付出しの数量を基本とし、ミネラル等の数量を勘案のうえ利用人員を認定したもの <略>

(8) 原始伝票の付出しの欄に記載されている数量と他の付出しの数量の合計数量を基本とし、ミネラル等の数量を勘案のうえ利用人員を認定したもの <略>

(9) ステーキ、やきそば及びやきうどん(以下「ステーキ等」という。)の数量によつて利用人員を認定したもの <略>

(10) 付出しとステーキ等との合計数量によつて利用人員を認定したもの <略>

(11) 付出し(他の付出しを含む。)とステーキ等との合計数量によつて利用人員を認定したもの <略>

(12) 他の付出しとステーキ等の合計数量を基本とし、ミネラル等の数量を勘案のうえ利用人員を認定したもの <略>

(13) ボトルのキープのみであり、利用人員を一人と認定したもの <略>

(14) ミネラル等の数量によつて利用人員を認定したもの <略>

(15) 酒類の提供状況より判断して利用人員を認定したもの <略>

(16) 同一人の行為をボトルのキープを伴うものと伴わないものとに分けられており合計すれば課税対象と認められるもの <略>

(17) 利用行為の内容について書き換えたもの <略>

(18) 一回の利用行為を二回の利用行為の如く書き換えたもの <略>

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